なぜKalawなのか。シャン高原の小さな町とコーヒー

なぜKalawなのか。シャン高原の小さな町とコーヒー

ミャンマー東部、シャン高原の山あいに、Kalaw(カロー)という小さな町があります。

標高はおよそ1,300m。

ミャンマーというと、一年を通して暑い国というイメージを持つ人も多いかもしれません。しかしKalawまで来ると、その印象は大きく変わります。

山々に囲まれ、朝晩にはぐっと気温が下がる。冬の朝には上着が欲しくなるほど冷え込むこともあります。

松の木が生え、霧が山を包み、乾季になると青い空が広がる。

私たちがコーヒーを作っているのは、そんな場所です。

 

標高1,300mの町

Kalawの町は、海抜約1,320mに位置しています。周囲にはさらに標高の高い山々が続き、私たちの自社農園も、およそ1,350〜1,450mの場所にあります。Kalaw Township全体もシャン高原上にあり、山地、谷、台地が入り組んだ地形です。

雨の多い季節と、ほとんど雨の降らない乾季がはっきりしていることも、この地域の特徴です。JICAの調査資料に掲載されたHehoの気象データでも、雨は5月ごろから増え、11月から翌春にかけて大きく減少しています。

そして、この乾季がコーヒーの収穫期と重なります。

赤く熟したチェリーを摘み取り、選別し、精製し、太陽の下でゆっくり乾燥させる。

Kalawの自然環境は、私たちのコーヒーづくりそのものと深く結びついています。

 

この山では、以前からコーヒーが育っていた

Kalawは、世界的に知られたコーヒー産地ではありません。

「Kalaw Coffee」という名前を聞いたことがある人も、まだほとんどいないでしょう。

けれど、この地域でコーヒー栽培が最近突然始まったわけではありません。

2009年のミャンマーの資料にも、Kalaw Townshipで栽培される農作物のひとつとして、茶とともにコーヒーが記録されています。

私たち自身も、2016年にCafe Kalawを始めた当初から、周辺の村で育てられたコーヒーを買い、店で焙煎して提供してきました。

山の村へ行けば、家の周囲や畑の斜面にコーヒーの木が育っている。

私たちにとってコーヒーは、最初からこの土地の身近な農作物のひとつでした。

 

Kalawの山の中へ

町を離れて山へ入っていくと、風景は少しずつ変わっていきます。

細い道を進んだ先に、小さな村々が点在しています。

現在、私たちが主にコーヒーチェリーを買い付けているのは、

タウンミンジー村
ペイネピン村
ニャウンゴン村

の3つの村です。

周辺にはダヌ族やパラウン族をはじめとする人々が暮らし、山の斜面でさまざまな農作物を育てています。

コーヒーも、そのひとつです。

大規模なプランテーションがどこまでも続いているわけではありません。

山の斜面やほかの樹木の間にコーヒーの木が育ち、収穫期になると、農家の人たちが赤く熟したチェリーを摘んでいきます。

私たちは毎年、こうした地域の複数の農家からコーヒーチェリーを直接買い付けています。

 

村からやってくる、赤いチェリー

収穫期になると、農家の人たちが摘み取ったチェリーが私たちの精製施設へやってきます。

ここからが、私たちの仕事です。

チェリーを受け入れ、状態を確認し、選別する。

そしてNaturalやHoneyなど、それぞれの方法で精製し、乾燥させていきます。

以前のCafe Kalawでは、周辺の村からすでに精製されたコーヒー豆を購入していました。

しかし、それでは収穫されたチェリーの状態や、選別、精製、乾燥までを自分たちで管理することができません。

そこで2023年から、農家から精製済みの豆ではなく、チェリーの状態で直接買い付ける方法へ切り替えました。

それによって初めて、Kalawで収穫されたコーヒーが持つ可能性を、自分たちの手で追いかけられるようになりました。

 

自分たちでも、コーヒーを育てる

地域の農家からチェリーを買い付ける一方で、私たちは自分たちでもコーヒーを育てています。

現在運営しているのは2つの農園です。

1つは約42,000㎡、標高約1,350〜1,450m。もう一つは約2,700㎡、標高約1,360m。

主にCatuai(カトゥアイ)やCaturra(カトゥーラ)などを育てています。

苗木を育て、山の斜面に一本ずつ植え、草を刈り、木を育て、実がなるのを待つ。

コーヒーは、植えればすぐ収穫できる作物ではありません。

だからこそ、自分たちで栽培することで、それまで「農家から買っていたコーヒー」の見え方も変わりました。

一粒のチェリーが収穫できるまでに、どれだけの時間と仕事があるのか。

産地の中にいるからこそ、少しずつ見えてきたことがあります。

 

Kalawという産地を、農家と一緒につくる

私たちが目指しているのは、自社農園だけでコーヒーを作ることではありません。

地域の農家から品質に見合った価格でチェリーを継続的に買い取り、その量を少しずつ増やしていく。

栽培や収穫について農家と情報を共有しながら、より良いチェリーを作ってもらう。

そして、そのチェリーを私たちが責任を持って精製し、Kalawのコーヒーとして日本をはじめとする市場へ届けていく。

Kalaw産コーヒーの品質と評価が高まれば、コーヒーを育てることが農家にとって、より安定した仕事のひとつになるかもしれません。

そして、コーヒーを育ててみようと考える農家が少しずつ増えていくかもしれない。

私たちは、そんな循環をつくりたいと考えています。

 

なぜ、Kalawなのか。

有名な産地だから、この土地を選んだわけではありません。

すでに世界で評価されたコーヒーがあったからでもありません。

私たちはこの町で暮らし、Cafe Kalawを営み、周辺の村を訪れ、そこで育てられているコーヒーを飲んできました。

その中で、

「この土地のコーヒーは、もっと良くなるのではないか」

と思うようになりました。

まだ知られていない。

まだ完成していない。

だからこそ、自分たちで育て、農家と一緒に品質を高め、精製し、その変化を毎年確かめていくことができる。

Kalawは、私たちにとって「コーヒーを買い付ける場所」ではありません。

これから一緒に育てていく、コーヒー産地です。

この山で育った一粒のチェリーが、どのようにして一杯のコーヒーになっていくのか。

次回は、その続きをご紹介します。

 

NEXT JOURNAL

コーヒーチェリーが生豆になるまで。
Kalaw Coffee Factoryの仕事。

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